*生前対策には、他にも家族信託や遺言書作成という方策があります。
こちらをご参照ください。
→家族信託
→遺言書作成
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→相続対策の順番
相続以外にも、心配なことは沢山あると思います。
入院することになったら、認知症になったら・・・ 誰が面倒を見てくれるだろう。健康なうちは良いが身動きが取れなくなったら、誰に通帳や資産の管理をお願いしたら良いだろう。終末期(これ以上、医療行為では回復しない段階)になったら、誰が私の医療の方針について医師に提示してくれるのだろう。亡くなった後の部屋の片づけや各種精算は、遠い親族に迷惑を掛けたく無いが、誰に相談したら良いだろうか。
ここでは、こうした老後の生活に密着した生前対策についてご案内させていただきます。
お年を召された方にとっては、まだまだ元気と思っていても、やっぱり、いつかは体が思うように動かない日がやってくることに不安を感じることもあるかと思います。
そんな事を見越して、事前に法的な準備をしていくことも重要なことです。
身体が動かなくなると、財産の管理もなかなか思うようにいかないものですが、家族のように24時間、365日、寄り添ってもらえる方がいらっしゃる方は幸せものです。
でも、そうでなければ、法律の力を借りてでも、しっかりと自分の財産を守っていかなくてはいけません。認知症であるがゆえに、オレオレ詐欺に引っかかってしまったり、親族に通帳を預けておいて、使い込まれてしまったりと、近年、様々な問題が上がってきております。
こうした対策としては、財産管理契約を結んで、適切に管理してもらう事も有効な手段です。
また、遺言書を書くほどではないかな・・・ でも自分が、先に死んだら妻はしっかりと暮らしていけるだろうか。葬儀の手配や法要、自分亡き後にもらうことになる年金の請求は一人で出来るだろうか、こうした手続き一式を代行してくれる信頼できる専門家はいるのだろうか・・・こうした点は死後事務委任契約によって、対応が可能です。
最近では、身近な家族がいないので尊厳死の公正証書(正式には「介護医療に関する意思表示宣言」公正証書)を作成して、また誰にこの公正証書を託して、医師に最後の意思表示をしてもらうかを決めておく、という方も少しずつ増えています。
相続の開始前に、自分の健康状態と万一の時に備えて、事前の準備をしておいた方が良いのではないかと思われる方に生前での対策をご案内したいと思います。
1.任意後見契約とは
任意後見とは、予め元気なうちに、将来の認知症などに備えて、自分の信頼できる人や法律家などに将来の後見人として指定して、事前に後見人を決めておく制度です。こちらは公正証書で契約書を作成しますので、公証役場での対応となります。そして、10年後や20年後に、その時が来た時にちかくで見守りをしている方や貢献人に指定されている方が、まさに判断能力が欠如しているので、任意後見の契約に基づいて、後見人に就任する手続きを行います。
任意後見というのは一種の契約ですから、この制度を利用する際には本人に事理を弁識する能力がなくてはなりません(すでに認知症となってしまっている人と任意後見に関する契約を結ぶことはできません)
また、後見人にどのような権限を与えるか?については任意後見契約の内容によって細かく指定することになります。
任意後見制度の手続き
任意後見制度を利用するためには、まず本人と後見人となる人が「任意後見契約」を公正証書によって行います。
その後、実際に本人の事理弁識能力が低下した時点で、家庭裁判所に対して任意後見制度の効果を発生させる申し立てを行います(この申し立てができるのは本人や本人の配偶者や4親等以内の親族、後見人となる予定の人です)
家庭裁判所はこの申し立てを受けると後見人を監督する「任意後見監督人」を選任します。
任意後見監督人が選任されると、任意後見が開始することになります。
※誰が後見人となるのか?
後見人となるためには特に資格等は必要ありません(ただし、後で説明するように「後見人となれない人」に該当する場合には後見人となれません)
そのため、実際には本人の介護を行っている親族や、親しい友人などが後見人となるケースが少なくありません。
ただし、後見人としての事務には重要な財産の管理が含まれることが多いですから、専門的な法律知識を持った専門家(弁護士や司法書士)に後見人となってもらうことも検討してみるとよいでしょう。
後見制度は本人の財産を守るために利用する制度ですから、財産管理についての専門知識を持った人に任せるのがより適切であるといえます。
※後見人となれない人
後見人となるためには特に資格は必要ありませんが、次のような条件に当てはまる人は後見人となることができません(法定後見制度、任意後見制度で基本的に共通です)
- 未成年者
- 過去に家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
- 破産手続きを行っている人(免責を受けた後には可能です)
- 音信不通となっていて連絡が取れない人
- 過去に本人に対して訴訟を起こしたことがある人や、その配偶者や近親者
- 後見人にふさわしくない不正な行為や不行跡が過去にある人
なお、これらの条件に該当しない人であっても、家庭裁判所が後見人に選任しないという判断をする可能性はあります。
上でも説明させていただいたように、任意後見制度を利用するためには本人と後見人となる人が「任意後見契約」を結ぶ必要があります。
この任意後見契約は公正証書の形によって行う必要があり、さらにその契約内容は法務局で登記の手続きを行う必要があります。
そのため、任意後見契約を行うためには以下のような費用が発生します。
- 公正証書の作成費用:1万1000円
- 登記手数料:1400円
- 登記のための印紙代:2600円
任意後見制度は、任意後見契約の内容に基づいてどのような効果が発生するか決まりますから、契約内容は慎重に検討する必要があります。
任意後見契約を公正証書によって締結した後は、実際に本人が認知症などになってしまったタイミングで家庭裁判所に対して任意後見事務の開始の申し立てを行うことになります(医師の診断などによって当然に任意後見事務が開始するわけではないので注意しておきましょう)
2.財産管理契約とは
入院の際に、誰にお金を管理してもらったら良いのか、入院費用の支払いを誰にお願いしたらよいのか、公共料金の支払いを誰にお願いしたら良いのか・・・ こうした現実的な問題に直面される方もいらっしゃると思います。
残念ながら、ご本人様が認知症になってしまったり、病院に通院する毎日となってしまうと、親族や特定の相続人による財産の使い込み等が、遺産相続では問題となっております。
親族同士(推定相続人)であっても、特定の人に財産を任せておくのが、不安だという方は、財産管理契約と任意後見契約を活用して、しっかりと財産を管理させていただくことが可能です。詳しくは、お気軽にご相談ください。
高齢の方で身体の自由がきかなくなってきた場合や、老人ホームやサービス付き 高齢者向け住宅などに入居する際に、施設に預貯金などを持ち込まず、個別の任意契約を 信頼できる第三者と結んで、財産の管理を依頼する契約になります。
これによって、ご自身に代わって財産の管理を行ってもらう人を決めることが出来ます。 財産管理契約が、成年後見制度や任意後見制度と違うところは、契約の締結後に、 さっそく効力が発揮されるところにあります。
※成年後見や任意後見は、契約者の意思能力の低下が条件となります。
財産管理契約は、民法の委任契約に基づく契約ですので、老人ホームや介護施設 への入所するものの、判断能力(意思能力)はハッキリしているので、成年後見 は使えない場合などに適用されます。
財産管理契約の内容
財産管理契約の内容は、双方の合意にもとづいて決められます。 例えば、任意後見契約と同じような預貯金の管理や年金の受領、公共料金の支払いなど一般的な 財産管理から、老人ホームに入居している方に代わって月々の支払いを代行することや、 定期的にお小遣いの受け渡しを行う事、毎月の記帳を本人や本人の子供に連絡することなど 個別契約のなかで自由に決めることが可能です。
しかしながら、認知症など判断能力が低下している方とは契約を結ぶことは出来ません。