*遺言書作成は、生前対策の一つの方策です。
遺言書の重要性
まず初めに、遺言書の重要性を考える場合、相続における遺産分割を 知っていただく必要があります。相続における遺産分割は、協議分割の 原則となっていることにあります。
この協議分割とは、ようするに”話し合いで遺産分割について決めて 下さいね”という事ですが、一般的なご家庭であっても相続財産は 50万~100万といった金額ではありません。 2000万~3000万といった単位の財産になりますので、受け取る側に とっては、人生で最大級の多額の資産を突然もらえる機会が、 この相続というタイミングなのです。
多くのご家庭やご親族間で、遺産相続が話し合いでまとまらず、相続トラブルに発展して しまっている状況もなんとなく、ご想像いただけるのではないでしょうか。
遺言書を作成する目的は大きく3つです。
・財産を遺す人の意思を実現するため
・相続トラブルの発生を防止するため
・相続手続きを円滑に行うため
まずは上記3つの目的をふまえ、自分が遺言で何を実現したいかをはっきりさせておくことが非常に重要です。
なぜなら遺言書を作成する目的によって、遺言の内容や作り方も大きく変わってくるからです。
あらためて遺言書を作成する目的を明確にしておきましょう。
遺言書を作成するときに押さえておきたい3つのポイント
【家族に遺言書を作成したこと、遺言書の保管場所を伝える。】
せっかく遺言書を作成しても死後に遺言書が発見されなかったり、紛失してしまったりすると遺言書を作成した意味がありません。
できれば遺言書を作成したことと、遺言書の保管場所を家族に伝えておきましょう。
どうしても伝えたくない場合は、発見されないリスクを軽減するため、家族が見つけやすい場所に保管しておいてください。
なお、自筆証書遺言の場合は紛失、盗難、破棄されてしまわないよう保管場所には注意しましょう。
(その点、公正証書遺言の場合は紛失、盗難、破棄してしまったとしても、再発行してくれるので安心です。)
【遺留分について検討する。】
遺言を書いておく際には「遺留分」を検討しておく必要があります。
遺留分とは、法定相続人が最低限の財産を承継できる権利を保証する制度になります。
例えば、亡くなった人が「長男にすべての財産を相続させる。」と遺言を書いていた場合、遺言の内容のとおり財産はすべて長男が相続することになりますが、残された他の子供が「おなじ子供なのに長男一人が相続するのはおかしい!」と言い出すことがあります。
このような状態を「遺留分を侵害されている」と表現します。
遺留分が原因で相続トラブルになると、双方が弁護士を雇うことになったり、裁判に数年間かかることもあります。
遺留分に配慮した遺言書を作成することで、相続トラブルに発展して余計な費用や時間がかかるなどのリスクを軽減することができます。
ただし、事情によっては遺留分を侵害する内容の遺言を書かざるを得ないこともあるので、そのときは遺留分を請求されることに備えて、遺言の内容をアレンジしたり、遺留分を請求されたときにスムーズに支払えるよう保険に入っておくなどの準備しておきましょう。
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【財産内容はできるだけ詳細に書いておく。】
あなたが亡くなった後、相続する人は遺言書を使って預貯金や証券口座、不動産の名義変更を行う必要があります。
財産内容がわからないと相続手続きの際に漏れてしまったり、財産の在処を調査するのに時間がかかります。
相続する人が漏れなく、スムーズに手続きできるよう預金口座や不動産の所在は明確にしておきましょう。
遺言のメリット
生前に遺言書を作っておくといったいどんなメリットがあるのか? 遺言書のメリットについて説明していきたいと思います。 一般の方は、なかなか遺言書の効力について把握していないように思いますが、遺言作成 のメリットについては、生前にきちんと把握しておきたいものです。 後のトラブルを避けるためにも、遺言は大変有効な生前対策と言えます。 それでは遺言書を作成しておく最大のメリットを2つ挙げたい思います。
①遺産分割協議
法定相続人による遺産分割協議が不要になる遺言がない場合、原則として亡くなった方の 相続人が遺産相続に関して協議を行い、協議が整えば、遺産分割が行われます。 この遺産分割協議で一番大変なことは、相続人全員の足並みを揃えることです。 一人でも不同意な者がいれば、骨肉の争いとなり、いわゆる遺産相続争いにつながりかね ません。 遺産相続で、争いになってしまう多くのケースが、 「私と私の子どもには、遺言書なんて必要ない」 と安易に考えて、遺言書を残さなかった方の場合に多くみられるのが、残念ながら実情です。
自分の死後、残される財産に関して相続人にどのように遺産分けをして欲しいかを明確に 書きとめておけば、こうした遺産相続争いを防ぐことができます。 これは先に去るものの責任のようにも思います。 相続争いは、自分の子供以外にも、子供の配偶者やその両親、または相続人となった自分 の兄弟やその関係者など、様々な人間関係が絡んできてしまうのが、その複雑たるゆえんです。 ですから、遺言書は、親族の全員の平穏を導く保険とも言えると思います。
②自分の好きなように財産を分けたい
自分の好きなように遺産分割をして欲しい場合、遺言書を作成し、充分な生前対策を行う 必要があります。 これがしっかりと出来ていれば、あらかた自分の好きなように財産を相続させることが できます。
- 「配偶者である妻に、全部相続させたい」
- 「法定相続人以外のお世話になった人に財産を譲りたい」
- 「このひとには、他の相続人よりも多めに相続させてあげたい」
- 「会社の事業承継の方針を明確にして、従業員の雇用を守りたい」
などです。このほか、認知していない子を遺言により認知するという身分行為も遺言を 使って実現できます。 これらは、大きなメリットであると思います。 ただし、相続人の遺留分について考慮しなけれ、後にトラブルを引き起こすきっかけに なってしまうこともあります。 遺言を書く場合は、あらゆる状況を想定し、専門家のアドバイスなどを得ながら書くこと をお勧めいたします。