法定相続情報証明制度とは

「法定相続情報証明制度」の新設 

平成29年3月28日の閣議で、以前から法務局が提案していた、相続手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度」について、平成29年5月29日から実際に運用が開始されました。

そもそも、「法定相続情報証明制度」とはどのようなものなのでしょうか。 

この「法定相続情報証明制度」とは、現状の相続手続きの際に必要となっている戸籍関係書類による相続関係特定について、より簡易的にわかりやすく相続手続きを進めるため、必要戸籍等書類を一度法務局に提出して、法務局が「法定相続情報一覧図」を発行すれば、それをもって従来戸籍等で相続関係を特定していたところ、戸籍の提出をしなくても相続関係を特定、証明できる公的書類として法務局の相続登記手続きで使用ができるようになる、といった制度です。

こちらの法定相続情報一覧図は、現状まだ法務局の手続きでしか使用できないものですが、いずれ金融機関の相続手続きでも使えるようになるのではないかと言われています。

そのようになれば、相続手続きで戸籍謄本関係を法務局や金融機関用にと何通も取得する必要がなく、また公的証明書類ですので、これまで法定相続人特定等、書類審査に時間を要していた金融機関の相続手続きにおいては、よりスピーディーに払戻しや名義変更手続きを完了できるのではないかと予測されます。 

なお、まだあくまで確定的な情報ではないため、多少情報に変更があるかもしれませんが、戸籍謄本等とあわせて、相続関係説明図(相関図)も作成し法務局へ提出する必要があります。

 これらの法務局へ提出する書類作成に関しては、当事務所のような司法書士の専門分野となっています。

 ただ、この制度の目的は、相続が発生したのに名義変更せず放置された不動産の名義変更手続き(相続登記)を促すため、となっていますが、そもそも戸籍謄本収集の手間が省けない事、法定相続情報一覧図を発行してもらっても相続人間での遺産分割協議がまとまらないといった問題や、行方不明の相続人がいたり、売却できない不動産だから放置されていたり等、根本的な問題解決には繋がらない可能性もあります。

また、手数料無料で法務局で手続きしてもらえるため、法務局に作成依頼が殺到し、従来よりも相続登記手続きに時間がかかってしまうなど懸念要素も多くあります。

 いずれにせよ、相続が発生して相続人となった皆様においては、少しでも相続手続きが簡略化され、費用も抑えられるように、そして相続手続きにかかる時間や心理的負担においても軽減されるよう、少しずつでも相続の制度が整備されていくことが求められています。

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