[前提事例]
被相続人は東京都世田谷区にお住まいの父(平成27年10月3日死亡)。
相続人は父と共に暮らしていた母・横浜市在住の長男と名古屋在住の長女の合計3名。
横浜市の長男は、父が亡くなってからは葬儀などで世田谷の実家へ何度か足を運んだが、それからしばらくは仕事が忙しく実家へは戻っていなかった。父が亡くなって数ヶ月が経過した頃(平成28年6月上旬)、実家へ戻ると母から税務署から届いた封筒を見せられ、相続税申告をしなければいけないことと、相続手続きを急いでやらなければいけないことに気が付く。
上記の状況において、長男はどこに相談していいのかわからずインターネットで調べて当事務所へご相談に来られた。
まず、相続人を確定することから
相続税申告の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければいけません。(国税庁のホームページ参照 ≫相続税の申告と納付)
長男はこのことを知っていたにも関わらず、なぜ相続税の申告は不要だと考えたのでしょうか?
本事例において、相続人は3名ですから相続税の基礎控除額は4800万円となります。被相続人である父の遺産は、世田谷の自宅不動産(固定資産税評価額で土地2400万円、建物350万円)、預貯金が1500万円程度で合計4250万円が総遺産額だと長男は考え、基礎控除額に満たない以上は相続税の申告は不要であると思い込んでいました。
相続税の計算の基礎となる土地の価格は固定資産税評価額ではなく、路線価での計算方法となります。今回のケースでは、自宅が国道に面しており非常にいい場所にあったためか路線価が想定以上に高額で、土地は路線価計算でおよそ3800万円にも及びました。これにより、総遺産額は約5650万円となりますので相続税申告が必要になるわけです。
本事例においてポイントとなるのは、「相続税での土地の価格の算定方法」です。長男はこの価格の算定方法を間違えてしまったため、そもそもの遺産総額を勘違いして相続税申告が不要と判断してしまったのです。
相続税申告に必要な書類集めには時間がかかる
相続税が必要とわかった以上、相続税申告に必要な書類一式を一気に集めていかなければいけません。専門家ではない一般の方が被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めることとなれば3週間~4週間はかかるでしょう。不動産の所在地の役所に出向き名寄帳を取得しようと思えば平日に休みを取っていかなければいけません。金融機関をまわって残高証明書や異動明細を取得するためには平日の9~15時までに被相続人の取引金融機関をまわらなければいけませんし、残高証明書が手元に届くまでは数週間、金融機関によっては1ヶ月以上かかることもあります。
このような書類収集を相続人のうちの誰かがやっていかなければいけませんので、2ヶ月なんて短い期間はすぐに経過してしまいます。平日に何度か休みを取らなければいけない方は会社やお仕事の都合もあるわけですからすぐに休むわけにもいかないでしょう。
相続税申告期限に間に合わなければペナルティがありますので、やるのなら覚悟を決めて一気に書類集めを進めていくようにしましょう。
本事例での当事務所が行ったこと&解決方法
本事例において、相続税の申告期限は平成28年8月3日です。それまでに相続税申告に必要な書類を確実に集め、至急で遺産分割協議をまとめる必要がありました。
ご来所されたのは6月の中旬だったのですが、その日のうちに当事務所提携の税理士事務所へ相談へ行っていただきました。税理士の先生も急ぎの案件であることを理解してくれ、当事務所と税理士とお客様(横浜市の長男の方)の3者で手分けして一気に手続きを進めていくこととなります。
当事務所では戸籍や名寄帳、残高証明書といった金融機関の書類を集め、早急に遺産分割協議書の原案作成に入ります。お客様の方では、遺品の中から相続税申告に必要な書類(通帳など)を見つけ出していただき、葬儀費用などの領収書関係や生命保険証券といった書類を整理してもらいます。税理士は、当事務所とお客様が集めた書類を確認・精査して相続税がかからない分割方法を検討。税理士が検討した内容で、当事務所が遺産分割協議書を作成し、相続人全員での協議をまとめました。(急ぎだったため名古屋にいる長女は横浜まで来ていただき当事務所で調印をしました)
ここまででおよそ一ヶ月半。何とか相続税申告期限に間に合い、税務署への相続税申告と法務局への相続登記を完了することができました。
相続税の申告期限が近い場合には、連携が重要になってきます。相続案件が多い当事務所では、いつも依頼している提携税理士と密に連絡を取り合いスムーズに進めることができました。この強い連携は相続を専門としている事務所ならではだと思いますので、申告期限が迫っている場合には絶対に相続に特化した事務所へご相談することをお勧めします。