遺産分割協議者の中に未成年者がいる場合

[前提事例]
 横浜市旭区に住むご相談者の女性は、半年ほど前に突然ご主人が事故で亡くなり、相続手続きについてどうすればいいのかわからずにご相談に来た。まだ未成年者(高校2年生)の子供と妻であるご相談者のお二人が相続人となり、相続財産としては、家族3人で住んでいた旭区のご自宅(戸建て住宅)と預貯金800万円。ただし、ご自宅はまだ住宅ローンが残っており、抵当権も付いた状態。未成年者がいる場合の相続手続きには家庭裁判所の手続きが必要なことを知り、どうすればいいのか途方に暮れていた。

家庭裁判所での特別代理人の申立て

 通常、相続手続きであれば相続人全員での遺産分割協議を行い、その話し合いのもと相続財産を分け合い承継していく必要があります。しかし、未成年者がいる場合の遺産分割協議はそう簡単にはいきません。なぜなら、相続人である未成年者と母は、遺産分割の中で利益相反関係となり、母は未成年者の代理人となれないからです。この場合は、相続人である未成年者である子供のために「家庭裁判所で特別代理人の申立て」をしなければいけません。
 ご相談者様としては、預貯金は子供の将来のために使ってあげたいと思っていたので、すべて子供のものにしてもかまわないと考えていましたが、旭区のご自宅についてはどうしても自分の名義にしたい思いがあるようでした。

自宅を母名義にするための問題点

 自宅を母名義にするためには、遺産分割協議を行わないといけません。そうなれば必然的に家庭裁判所に特別代理人の申し立てをしなければいけませんが、当該申し立てをする際に、遺産分割協議書の案を添付しなければいけません。この案が未成年者の利益を侵害するような内容の場合、家庭裁判所の審査の中ではねられてしまうため、母が未成年者よりも多く財産を受け取ることにつき合理的な理由を示す必要があります。今回、旭区の自宅(土地と建物)の固定資産税評価額は約1500万円でしたので、預貯金をすべて未成年者に渡す内容にしたとしても、未成年者は法定相続分以下の財産した取得することができないことになりますので、家庭裁判所の審査を落としてしまう可能性がありました。
 この問題点を踏まえたうえで、当事務所から下記のような解決までのご提案をしました。

どのように解決するか

 このまま未成年者の利益を侵害する内容で特別代理人の申し立てを行うと、家庭裁判所が通らない恐れがあったため、母がご自宅を取得するにつき、合理的な理由を示した内容で『上申書』を当事務所が作成し、それをあわせて添付することで、無事に未成年者の子供は預貯金をすべて相続し、母が旭区の自宅を取得する内容で申し立てを通すことができました(特別代理人には、ご親戚の方になっていただきました)。
上申書の内容については、具体的な話になってしまうため内容を伏せさせていただきますが、きちんと法律的な要件を整えたうえで、しっかりとした文面での作成をすることができれば、未成年者が法定相続分以下となる内容の遺産分割協議書(案)でも通すことできるものと考えられます。
 なお、今回のもう一つの問題点である『住宅ローン』については、ご主人様が団体信用生命保険に入っていたことをご相談者様である奥様から聞いておりましたので、金融機関に対して申し出をしていただき、無事に全額が完済となって、その抵当権抹消登記についても当事務所が担当することとなり、奥様は住宅ローンの支払い義務も消え、全てご提案通りに解決することができました。

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