名寄帳とは、課税の対象となっている固定資産(土地・家屋)を所有者ごとに一覧表にしたもののことをいい、「なよせちょう」と読みます。
名寄帳は、「固定資産課税台帳」と呼ばれることもあります(「固定資産課税台帳」は、役所によっては「土地家屋課税台帳」という名称のこともあります)。
「名寄帳」と「固定資産課税台帳」(または「土地家屋課税台帳」)は、通常、同じ意味で使用されますが、「固定資産課税台帳」は一棟一筆ごとに記載されているもので、「名寄帳」は固定資産課税台帳を所有者ごとに名寄せしたものという使い分けがなされることもあります。
相続人は、亡くなった人(被相続人)の名寄帳を確認することで、被相続人が所有している土地・家屋を正確に把握することができます。
相続人になったら、遺産の調査の一環として、名寄帳を確認することをお勧めします。
名寄帳の閲覧・取得の方法
名寄帳は、市町村の役所(東京23区は各区の都税事務所)で、閲覧・取得することができます。
名寄帳には、ある人が、その市区町村の中に所有している土地・家屋が一覧表で記載されています。
複数の市町村に土地・家屋を所有している場合は、それぞれの市区町村で名寄帳を閲覧・取得しなければ、その人の所有するすべての土地・家屋を把握することはできません。
被相続人の名寄帳を閲覧・取得する場合は、そもそも、その人が、どの市区町村に土地・家屋を所有しているかどうかが分からなければ、どこの役所で名寄帳を閲覧・取得すべきかが分かりません。
被相続人が1月1日時点で所有している土地・家屋は、毎年4月~6月頃(市町村によって異なります)に納税義務者に届けられる、固定資産税・都市計画税の課税明細書に記載されています。
課税明細書に記載されているのは1月1日時点で所有している土地・家屋ですから、1月2日から亡くなるまでの間に手放したり新たに購入したといった情報は反映されていません。
そこで、課税明細書の記載されている土地・家屋の所在地の市区町村で名寄帳を閲覧・取得することで、最新の情報を確認することができるのです。
なお、被相続人が、1月1日時点で所有している土地・家屋が存在する市区町村以外の市区町村にある土地・家屋を、1月2日から亡くなるまでの間に取得した場合、課税明細書に記載されていないため、気付かない可能性があります。
そのような可能性がある場合は、土地や家屋の譲渡契約書等がないかどうか、被相続人の書類の管理場所等を念入りに探すとよいでしょう。
名寄帳は閲覧のみすることも、取得することもできますが、他の共同相続人がいる場合は他の共同相続人も確認できるように、取得した方がよいでしょう。
手数料は、市区町村によって異なります。
無料のところもあれば、有料のところもあります。
有料の場合は、150~300円のところが多いようです。
役所の窓口で取得することもできますし、郵送で取得することもできます。
名寄帳は、所有者とまったく関係のないような人は取得できません。
名寄帳を取得できるのは、主に次のような人です。
- 所有者本人
- 親族
- 納税管理人
- 相続人
- 相続人の代理人
名寄帳の取得の際には、所有者との関係を証明するための書類が必要です。
必要書類は、申請者と所有者との関係や役所によって異なるため、詳しくは役所に問い合わせるとよいでしょう。
また、取得を代理人に委任する場合は、委任状が必要です。
相続登記を司法書士に依頼する場合は、名寄帳の取得も司法書士に委任できますが、その際に必要となる委任状の書式は司法書士が用意してくれるでしょうから心配は無用です。
司法書士等の専門家以外の人に委任する場合は、役所のウェブサイト等で委任状のひな形をダウンロードして利用するとよいでしょう。
また、郵送で取得する方法については、役所によって多少違いがありますから、不備のないように、役所に問い合わせるとよいでしょう。
なお、名寄帳を取得する際は、固定資産評価証明書も併せて取得するとよいでしょう。
固定資産評価証明書は、土地・家屋の固定資産税評価額を証明するための書類で、登記の際に必要になります。
固定資産評価証明書も、名寄帳と同じ窓口で取得でき、また、必要書類についても通常同じなので、一緒に取得しておくと面倒がないでしょう。
名寄帳の見方について、不明な点は、司法書士か役所の窓口に確認するとよいでしょう。