マンションの生前対策

年始の会合で、民法改正が話題になりました。マンションの高齢世帯では、区分所有者は夫一人というケースがまだ多いようです。この場合、夫が亡くなると、その財産は、妻が1/2、子供が1/2相続することになります。

そうは言っても、通常は、親が困るような要求を子供がすることはなく、妻は、自宅に引き続き暮らし、夫の残した預貯金で暮らすのはごく当たり前だと思いますが、実際には、子供への財産分与で、妻の老後の生活設計が危うくなることもあるのです。子供がいない場合(親や兄弟に相続権あり)や再婚の場合もありますから。

特に、自宅の不動産評価額が高くて、預貯金があまり多くない場合、自宅を妻が相続すると、預貯金は妻の手元に残らなくなります。場合によっては、自宅を処分しなくてはならないことにも…。それを何とかしなければということで、民法が改正され、「配偶者居住権が新設されたのです。

たとえば、2,000万円の自宅の場合、妻が、1,000万円の配偶者居住権を相続、子供が、1,000万円の所有権を相続というようなことができ、妻が自宅に住み続けることができます。さらに、預貯金も子供と1/2ずつ相続ができ、生活設計が立てやすくなります。

ただ、その場合…妻は区分所有者ではなくなるんでしょうね。所有権者ではないのですから。で、所有権を相続したマンションに住んでいない子供が区分所有者=管理組合の組合員となる…。それって、何かすっきりしないとの声が上がりました。管理組合運営から考えたら、夫の亡き後、妻には区分所有者として住み続けてもらいたい…と。

私は、それよりも、夫が元気なうちに、自宅を共有名義にしてもらう方が、すっきりリスクヘッジできるし、管理組合としてもありがたいのではないか…と。

結婚20年以上の夫婦が、相手に自宅を贈与した場合は、2,000万円まで贈与税がかかりません。さらに、昨年7月1日施行の民法改正で、贈与された自宅は遺産分割の対象としなくてもいいということになりました。

これは、結構大きいと思います。例えば、自宅が、4,000万円の評価額だったら、区分所有権の半分2,000万円を、贈与税なしで妻に生前贈与でき、その分は、遺産分割から外せるのですから。

妻の立場からすると、安心ですし、管理組合から見たら、共有名義にしてもらった方が運営上もありがたいはずです。役員の資格が区分所有者に限られていても、妻も区分所有者になれば役員に就任できます。

また、総会での議決権の行使も、区分所有者であれば、届け出ればどちらにも可能です。一方が、認知症等で意思表示が難しくなっても、もう一方が意思表示できます。

そんな話をしたら…

それは、怖いな~財産分与したら、自由に生きたいから離婚してくれなんて言い出しそう…と、半分冗談、半分本気で男性陣。最近、芸能人の「卒婚」の話をテレビで見て、奥さんがうらやましがっていたから危ない…と。

いやいや、定年退職したら、自分から、自宅を半分贈与したいと言うような気配りがある夫は、奥さんに大事にしてもらえますよ…と私。

でも、まったく響かなかったみたいです。

PAGE TOP