遺言書の検認手続

見つかった遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言)に封印がある場合は、勝手に開封してはいけません。法律では5万円以下の過料が科されることになっています。

勝手に開封したからといって、遺言書が無効になるわけではありません。ただし、開封したことで遺言書の偽造や変造を疑われる場合があります。

遺言書の開封をめぐるトラブルを考慮して、遺言書の封筒に開封を禁止する注意書きが書かれている場合もあります。このような記載がなくても、遺言書を勝手に開封してはいけません。

遺言書の検認は、遺言書を保管していた人または遺言書を発見した人が、遺言者(遺言書を書いた人=亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で申立てを行います。

遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所は、裁判所のウェブサイトから調べることができます。家庭裁判所は北海道を除く各都府県に1か所ずつ、北海道には4か所あります。

検認の手続きには、次のものが必要です。

  • 遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言)
  • 遺言書の検認の申立書(800円分の収入印紙を貼付)
  • 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 連絡用の郵便切手

このほか遺言者と相続人の関係によって、追加で戸籍謄本が必要な場合があります。

遺言書の検認の申立書は、検認以外の手続きにも共通して使われる「家事審判申立書」という書式を使います。「家事審判申立書」には、申立人と遺言者の本籍、住所、氏名、生年月日(申立人は年齢、職業も)に加えて、遺言書の検認を求めることを記載します。別紙として「当事者目録」も必要です。「当事者目録」には相続人全員の本籍、住所、氏名、生年月日、年齢を記載します。

用紙の種類と記載事項が多いため、裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードして、事前に必要事項を記載しておくことをおすすめします。

遺言者が死亡した事実と、遺言者と相続人の関係を確認するため、戸籍謄本が必要になります。戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で発行されます。遺言者の戸籍謄本は出生から死亡まで連続したものが必要で、生前に本籍地が変わっている場合は前の本籍地からも取り寄せる必要があります。

遺言書の検認は申し立てたその日に行われるのではなく、後日、指定された日(検認期日)に行われます。裁判所は相続人全員に遺言書の検認をすることを通知します。

検認期日には相続人が全員出席する必要はありませんが、申し立てた人は出席しなければなりません。

検認期日には、遺言書、申立人の印鑑、その他裁判所から指示されたものを持参します。持参した遺言書は、出席した相続人の立ち合いのもと開封され、検認が行われます。つまり、検認期日になるまで遺言書を開封することはできません。

検認が終われば、遺言書に検認済証明書をつけて返却されます。検認済証明書がある遺言書は、相続の手続きに使うことができます。

遺言書の検認には1か月以上の期間がかかります。その間は遺言書の内容が明らかにならないため、相続の手続きをすることはできません。

しかし、検認に時間がかかったことを理由に、相続放棄の申述期限(3か月)や相続税の申告期限(10か月)などが延長されることはありません。

これらの手続きが必要な場合も考慮して、検認が必要な遺言書が見つかったときは速やかに検認手続きを行うようにしましょう。

以上、遺言書の検認が必要な遺言書の形式と手続きの具体的な手順をお伝えしました。

遺言書のうち「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

検認が必要な遺言書が見つかったときは、速やかに検認手続きをしましょう。検認には1か月以上の期間が必要で、その間は相続手続きが止まることになりますが、その他の相続手続きの期限は延長されません。

遺言書は検認を受けるまで開封してはいけません。遺言書にどのようなことが書かれているのか気になって仕方がない気持ちはありますが、勝手に開封しないように気をつけましょう。

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