限定承認の注意点

「債務の額は分からないけれど、もしかしたら資産が残るかもしれない」と感じた場合、限定承認が有効かもしれません。資産のほうが多ければ、債務を全て支払った上で、残った分をもらう。債務のほうが多ければ、資産を債務返済のために充てる。残りの債務は引き継がない。ということができます。

例えば、
預貯金が500万円、債務が300万円であった場合、債務を支払い、残る200万円を相続することになります(弁護士等の専門家への費用は、別途かかります)。

預貯金が500万円、債務が800万円であった場合、資産を債務返済に充てると資産が残りませんので、0円です(弁護士等の専門家への費用は、別途かかります)。

なぜかは分からないけれど、良いイメージがありそうな限定承認ではありますが、気をつけなければならないこともあります。

限定承認で気をつけるべきこと

(1)件数が少ない
少し古いデータになりますが、平成19年度では、
亡くなった人の数:110万8334人
限定承認は、1013件
相続放棄は、15万49件
限定承認、相続放棄以外が単純承認であると考えれば、限定承認は明らかに少ないと言えるでしょう。

(2)専門家が少ない
限定承認の件数が少ないので、限定承認を取り扱ったことがある専門家も少ないでしょう。そして、手続きが煩雑であるということもあり、専門家側から限定承認を選択しないようアドバイスしているのも要因の1つかもしれません。

(3)相続人全員で行う。
限定承認は、相続人全員が全会一致で行わなければなりません。相続放棄は1人でも行うことができましたので、大きく異なるところであると言えるでしょう。相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内に、相続人全員が全会一致で限定承認を選択することができる状況であればよいのですが……。

(4)みなし譲渡所得に対する税金
単純承認の場合には、資産も負債もそのまま相続人に相続されることになります。名前が変わっただけというイメージでよいでしょう。しかし、限定承認の場合には、みなし譲渡所得に対する税金がかかる場合があります。

例えば、譲渡価格:2000万円、債務500万円であった場合、1500万円を相続できるかというとそういうわけにはいきません。

不動産購入価格:1500万円であった場合、2000万円-1500万円=500万円がみなし譲渡所得として、課税されます。税率は、長期譲渡所得、短期譲渡所得によって、変わります。思ってもいないところで、税金がかかるということがあります。

まとめると、
・相続が発生したときには、3種類の選択肢がある。
・限定承認を行う場合には、気をつける。
最終的なご判断は司法書士などに相談の上行ってください。

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