相続対策をどう切り出すか?

子が「親に黙って」相続財産を調べるのには限界がある

親が健在なうちから、子も相続の準備や心がまえをしておくことは重要です。しかし、「では、具体的に今何をすべきか」「何から手をつければ良いか」が気になるところです。

最初にすべきことは、ずばり親の財産の把握です。子の立場から言えば、現時点で親がどんな種類の財産を、どれくらいの額持っているのか、知っておくことです。相続税は親が遺した財産の額に応じてかかってくる税金です。その元となる財産とその評価額が分からないと対策の練りようがありません。

では、どのようにして把握するか? 親の財産は親が生きているうちは親のもの。将来的に自分たちが引き継ぐことになるからとって、言い方には気を遣います。子の立場からすると難しい問題となる部分です。

いきなり「お父さん、財産いくらあるの?」と聞くのは、家族といえどもあまりに直截過ぎるでしょう。単刀直入な物言いが通用する親子の間柄なら問題ないかもしれませんが、今まで相続の話題に触れたこともなく、生前対策について話し合う下地もない関係でいきなり聞かれると、親も面喰って身構えてしまうでしょうし、不本意にも「こいつは俺が死ぬのを待っているのか」などと思われでもしたら浮かばれません。

かといって、子が親に黙って親の財産を調べるのは限界があります。銀行の通帳を見たり固定資産税の通知書を見たりすれば、ある程度の財産は把握できますが、資産家であればあるほど、他にもいろいろと財産を持っているはずです。倉庫の奥に名のある芸術家の美術作品が眠っているかもしれません。あるいは、外国の銀行に秘密口座を持っているかもしれません。逆に、家族に黙って大きな借金をしているかもしれません。親の知らないところですべての財産を把握するのは、現実的に無理でしょう。

軽率に親に聞けず、自分で調べることも難しい、となると、やはり相続対策は子が手出しすべきではないという考えに行き着いてしまいそうです。しかし、そこで諦めては元も子もありません。どうにかして、お互い向き合ってオープンな話し合いができる方向に持っていかなければなりません。

資産の話をするには、その下準備として、親子が何でも話し合える場の雰囲気を整える必要があります。

硬い土の上に種をまいても芽が出にくいように、相続に向き合う親子関係が築けていなければ、実のある話し合いはできません。まずは、親子間で話し合える環境を整えましょう。

相続に関心が薄い親の場合は、まず相続に関心をもってもらったり、きっかけづくりから始めなくてはなりません。

さりげなく親に相続への関心を持ってもらう方法として、たとえば以下のようなものが考えられます。

●相続の本や記事を親の目につくところに置いておく。テレビで相続が話題にあがっているときに「うちは大丈夫なの?」と水を向けてみる

●近所や親族で相続が起きたタイミングを見計らって、「△△さんのところ、相続で大変だったらしいよ。お父さんはちゃんと準備しておいてね」と言ってみる

●相続というより老後の話として持ち出し、「老後のことで僕たちにしてほしいことがあったら、早めに言っておいてね」と促してみる

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