家族信託で課税対象となるのは受益者
家族信託で発生する税金には様々ありますが、相続税が発生するケースは受益権が委託者から相続人に移転するケースです。
家族信託では基本的に、委託者には税金は課せられません。実際に利益を受け取る受益者に対して、税金が課せられます。そのため、委託者が第一次的な受益者とされ、これが相続人に相続される場合に相続人に相続税が発生します。
家族信託で相続税が発生するのは上記のようなケースです。
家族信託に発生する相続税以外の税金
それではここで、相続税以外にはどんな税金が発生するのかについて解説していきます。
贈与税
贈与税とは本来、他人から財産を贈与された場合に、それを受け取った人に対して課せられる税金のことです。家族信託の場合、信託財産に係る権利は形式的には受託者に移転しますが、実質的に利益を得るのは受益者です。そのため、形式的権利者である受託者に贈与税が発生することはなく、受益者に対して、贈与税が発生します。
所得税・法人税
受益者がもつ受益権は債権ですので、売買することも可能です。
もしも受益者が他の誰かに売買された場合、所得税や法人税が発生してきます。
登録免許税
不動産を信託すると委託者から受託者にその所有権が移るため、所有権移転登記をする必要があります。その際、この不動産を信託された受託者に対して登録免許税が課せられます。
固定資産税
不動産を信託された受託者がその名義を移して所有権をもっている場合、受託者に固定資産税が発生します。実際に所有権移転登記をした翌年の5月から7月頃にかけて、受託者に対し固定資産税の課税通知書が送付されます。
税金が発生しないケース
委託者に課される税金はない
委託者には基本的に、課せられる税金はありません。
受託者に課される税金
受託者は実質的にその財産の利益を受け取るわけではなく、単に財産の管理を行うだけですので、基本的には税金は発生してきません。
ただし、信託財産が不動産であった場合には、上に挙げた「登録免許税」と「固定資産税」が発生する可能性があるので注意が必要です。
受益者に課される税金
家族信託では、委託者の生前は委託者がそのまま受益者と設定されていることもあり、その場合であれば特に税金は課せられません。
ただ、委託者の死亡後、またはあらかじめ委託者≠受益者とされている場合は受益者がその財産を受け取るため、そこに税金が発生してきます。
その際は、当初から第三者が受益者の場合は受益者に対して贈与税、委託者から相続人に受益権が相続で移転した場合には相続税が課せられます。
家族信託は節税対策にならない?
家族信託で課せられる税金は、節税対策にはならないと言われています。その理由として、家族信託は将来の財産継承の目的を達成するための手段であり、組むことが目的ではないからだということが考えられます。
たしかに家族信託には遺言代用としての機能もありますので、家族信託を設定した段階で、ある程度の安心を得ることはできるでしょう。
不動産の売却や買い替えなどを行い、結果として節税対策になる可能性もあるかもしれませんが、家族信託は節税目的で行うものではなく目的を達成するためのものであるということは、まず理解しておきましょう。
そうでなければ本来の目的である安心した財産の継承ができずに、相続トラブルへと発展することにもなりかねません。