遺言は、遺言作成者の意思や想いを遺言作成者の死後に相続人や受遺者に伝えるためにあるものです(財産の承継を含め)。
この意思や、想いを伝える遺言を誤った方向に使ってしまう方がおられます。
遺言が原因で思わぬ紛争を巻き起こす
遺言書は基本的に財産の継承先を記載するのが一般的かと思います。例えば「不動産は家業を継ぐ長男に与える」、「生前に介護などで私生活を犠牲にしてくれたので財産は長女に与える」などです。揉めてしまう遺言として皆さんが想像するのは、例えば愛人に全財産を与えてしまうような遺言の場合ではないでしょうか?
もともと財産の行き先については遺言作成段階から納得していた状況でも、遺言作成者の死後遺言を確認してから紛争に発展してしまうこともあります。しかもその紛争の原因となる内容は財産についての部分とは限りません。
例えば、付言事項という遺言作成者の相続人への思いを綴る部分、法律的には何らの効果もない部分です。
特定の相続人への怒りや、愚痴など、辛辣な文章。母親の介護を他の相続人にばかりにみさせてといった内容。しかし実際には特定の相続人も介護の手伝いをしており、特定の相続人からすればやりきれない思いを遺言から感じてしまいます。
遺言による相続手続きですので、特定の相続人の関与なしに他の相続人は単独で手続きを行うことができますが、遺言をきっかけに相続人同士の中が壊れてしまうのはとても残念なことですので、実際に二人でしっかりと話し合い、何度かの協議の上和解する形になります。
このような状況で弁護士など紛争の専門家が間に入ることは紛争を泥沼化させるので避けるべきです。
遺言は残された家族のために作成した方が良い
遺言作成者の勘違いで子供の間で無用な紛争が起こることもあります。。本来相続人が揉めないために作成すべき遺言書なのに結果的に要らぬ紛争のきっかけになってしまいます。
確かに子供や配偶者等への思いはいろいろあるとは思いますが、その遺言を作成することにより死後家族がどういう思いをするのかを考慮して作成することも重要になります。逆に財産の処分内容が一見不公平であっても遺言作成者の思いが真摯に伝われば遺留分請求をしないという結果になる場合もあります。遺言とは財産の行き先だけを決めるものではなく、残された家族の未来への希望を記すものでもあります。
遺言を作成する場合は、そんな部分も考慮しながら作成することもポイントなのかもしれません。